2008年12月18日木曜日

Rostropovich - New Recording 1996 / Soviet Recordings vol.13

しばらく前に友人がこのアルバムを僕に持ってきてくれたのです。
彼は僕の愛するピアソラの録音が1曲目に入っているという事でこのアルバムを持ってきてくれたわけなのです。
ピアソラのル・グラン・タンゴはこのロストロポーヴィチに捧げられたもので、このアルバムでのロストロポーヴィチはまるで生粋のタンギスツのようにうねり、跳ね、泣いている。なんと素晴らしい!
ただパートナーのピアノの方はそのロストロポーヴィチの演奏のようにはいっていない印象。
チェロがあまりに素晴らしいのでこれはちょっと残念・・・。

聴き終わり次の曲がかかると、出てきたその音に僕は耳が釘付け(耳は釘付けにならん)になる。
そこには今までどこでも聴いた事の無いような驚愕する音楽が鳴りはじめたではないか!
全神経が聴く事へと傾いていると・・・

なんと!
友人が「僕この曲聴くと、頭痛くなっちゃうんだよね。」
ポチ。
きゃ〜〜〜〜〜なんで止めるNooooooo!!

その曲は、ガリーナ・ウストヴォルスカヤのチェロとピアノのための『グランド・デュエット』。
友人は現代曲が苦手で聴くと頭が痛くなってしまうのであった・・・。

結局このCDは貸してもらえる事になったわけですが、これが聴けば聴く程すばらしい!
頭が痛くなるなんてなんてもったいない!
という事で、このCDを返す際に
「頭が痛くなるCDはオレが聴いてやるから、よこしやがれ^^」
と言ってみるも彼は首を縦には振りませんでしたとさ・・・。
と、それから半年くらい経つ先日、ようやくYaho○オークションで発見!即ゲット!!
いやあ、良かった良かった。

Rostoropovich New Recording 1996 /Sovieto Recordings vol.13

2曲目、ウストヴォルスカヤのグランド・デュエット、これがすごい。
鬱屈した精神の破裂音があるならこのような音か、と思うようなピアノの打鍵から始まり、
重々しく、暗いエネルギーを放つチェロが旋律を刻んでゆく。
今まで聴いたどの音楽とも違う、驚愕の音楽。
ウストヴォルスカヤさんはショスタコーヴィッチのお弟子さんで、ショスタコーヴィッチの再婚のプロポーズを断った事で有名だそうな。
ショスタコーヴィッチの弟子という事は、ロストロポーヴィチとも同門という事ですねえ。

その後にはシュニトケの曲が2曲。チェロとピアノのためのソナタ、そしてまたこれが・・・
『チェロ、ピアノとテープのためのエピローグ』。この曲でこのアルバムは締められるのですが、この曲が本当に素晴らしい。
テープというのは、コーラスのコラージュのようなものの入ったテープで、これが開始してからほぼ終わりまでずっと共演するわけなのです。まるで天国からの合唱のように。
ロストロポーヴィチは20分以上休むことなく弾き続け、その演奏がやむと、まるで何かが終わりを告げたように静寂が返ってくる。
その静けさは、人生の終わりを感じさせるほど安らかで、悲しい。
そう、それはベートヴェン、シューベルトの最後のピアノソナタのよう。


聴き終えると、かえすがえすもロストロポーヴィチという音楽家の巨大さを感じてしまう。
この偉大な音楽を作り出す人間がもうこの世にないなんて・・・。
彼の声は、今録も僕の心を激しく揺さぶってゆく。



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